安息の本棚

本を読了した後の自分の感想を残しておきたいと思い立ち、このブログを始めました。                           コメントに関する返答は仕様上できないようですが、ありがたく拝見させていただいております。Twitterもやってます。 @teruhiro_tose

3.『阪急電車』

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 「隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった……。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。ほっこり胸キュンの傑作長篇小説。」

 

 3冊目は「阪急電車有川浩さん著です。

 

①全体の感想

 阪急電車今津線、その片道数十分という短い道程の中に、多くの出会いを見ることができる作品でした。8つの駅ごとに折り返しを含め、16の異なる、しかしどこかで繋がっている物語が詰まっています。風景や心理描写については細かく書かれており、一語一語面白さを見出しながら読むことができました。

 電車に乗っていたり、小道を歩いていたり、そんな日常の中で、「そんなことよく注意しないと見落とすぞ!」と思うような描写が数多く書かれており、読んでいる節々で感嘆の声が思わず漏れていました。有川さんすごい。有川さんの本は色々読んでますけど、いやーやはりこれは。

 

②特に気になった点

 まず目次を見て、各物語の章タイトルが全て駅名になっていたことに「あっ」てなりました。こういう感じ、好きなんですよ、言葉では上手く表せないんですけど。ちなみに駅は宝塚駅西宮北口駅の8つの駅です。

 

 登場人物は主要キャラも含め多く出てきますが、特に印象に残っている人物は、「翔子」です。一番キャラが濃いんじゃないかと思います。翔子は五年付き合った彼氏とマリッジブルーになるのですが、そのタイミングを見計らったのか、同僚の女性に彼氏を寝取られ、あまつさえその女性はその彼氏との赤ん坊を身籠ってしまいます。彼氏と女性は結婚すると、翔子とは別れると説得するのですが、別れる条件として翔子が提示したのは「結婚式に必ず呼ぶこと」……読んでる最中「うわーこれ絶対何か企んでよな~」って思いました(笑)。

 的中しました。翔子が結婚式に着てきた服は純白のドレス。顔も明らかに新婦の女性より整った翔子が純白のドレス。当然新婦は顔を引きつらせます。新婦が見劣りするなんて恥ずかしすぎる…(笑)。これが翔子の復讐だったわけです。えぐい。

 しかし、これで翔子の思いが晴れたわけではありません。なにせ嫌がらせを成功させただけで、実際自分の状況が良くなったわけではありませんから。帰りの電車では少女(小学校にはまだ行っていないか?)に「花嫁さん」と呼ばれ、ついに我慢していた涙を流してしまいました。その時、助言をくれたのがその少女の祖母、時江でした。この時江さん、小説に出てくるキャラの中で一番強いかもしれません。何が?というのは一度読んでみてください、分かりますから。

 その助言を聞き、翔子はこれからの人生をいい方向に転換させていきます。どうか幸せになってくれ。

 

 他にも魅力的なキャラは多くいますが、長くなるので割愛します。濃いキャラの濃い物語が濃縮された中身になっていますよ。特に恋愛に絡んだ物語が多かったです。

 

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 自分も、日々生きる中で気づかなかった些細なことや人情の機微にも目をそっと向けてみたいと思います。

 

以上です、ありがとうございました。

 

阪急電車今津線…乗ってみたいです。