安息の本棚

本を読了した後の自分の感想を残しておきたいと思い立ち、このブログを始めました。                           コメントに関する返答は仕様上できないようですが、ありがたく拝見させていただいております。Twitterもやってます。 @teruhiro_tose

14.『博士の愛した数式』

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 「[ぼくの記憶は80分しかもたない] 博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた───記憶力を失った博士にとって、私は常に”新しい”家政婦。博士は”初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1階本屋大賞受賞。」

 

14冊目は小川洋子さん著「博士の愛した数式」です。

 

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①全体の感想(※ネタバレ無し)

 読了後、今まで本を読んできた中で感じたことのないような充足感がありました。こういうのを暖かい物語っていうんですかね。

 

 博士が家政婦とルート(家政婦の息子のあだ名)に向ける愛情も、家政婦とルートが博士に向ける愛情もとても深いのです。博士は80分前以上の記憶を忘れてしまうにも関わらず、お互いを家族であるかのような、また親友であるかのような心の距離の近い存在であり続けたのには、80分で消えない記憶が心に残っていたのだと思います。

 

 

 

②気になった点(※ネタバレ有り)

 

・博士の記憶

 博士は昔、交通事故により重傷を負い、その時の後遺症として記憶の保持ができなくなってしました。つまり、博士の記憶はその交通事故に遭った日で止まっているのです。この内容を読んでいる時に近頃読んだ「妻を帽子と間違えた男」の、脳に異常が見られる患者のエッセイを思い出していたので、勝手に感嘆していました。

 

 消えていく記憶を本人が知らないまま何十年も過ごすのはどんな気分なのでしょうか。心は若いはずなのに、容姿は明らかに老け、体も言うことを利かなくなっている…。博士は、朝起きた時に自分の記憶が80分しかもたないメモが袖に留まっているのを見るわけです。いつの間にかぼろぼろになっているメモを。

 

苦しすぎる。

 

ただ、家政婦とその息子と過ごす消えるとも消えない思い出は、きっと心に深く刻まれ続けているはずです。以後も幸せであれ!

 

 

家政婦の息子ルートくん

 このルートくん、齢10歳であるにも関わらず考えがたまに大人びているんですよね。そしてその心は博士に対する愛情に満ちているわけです。そしてその気持ちに応えるように、博士のルートに対する愛情も相当なものです。

 その二人のやり取りは他人の介入の余地も無く、孫とおじいちゃんみたいな感じに見えました。僕はおじいちゃんと孫という関係がたまらなく好きなので最高でした(笑)。

 

 博士のために、彼が好きな野球選手江夏豊プレミアムカードを多くの店を見回り、絶対に手に入れようとするルート。

 ルートの学校の宿題を丁寧に優しい言葉で教えてくれる博士。

 

あぁーいいですね。

 

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以上です、ありがとうございました。

 

 

僕は飽き性なのですが、意外とこの日記は続いています。