安息の本棚

本を読了した後の自分の感想を残しておきたいと思い立ち、このブログを始めました。                           コメントに関する返答は仕様上できないようですが、ありがたく拝見させていただいております。Twitterもやってます。 @teruhiro_tose

32.『火の粉』

 

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「「私は殺人鬼を解き放ってしまったのか?」 元裁判官・梶間勲の隣家に、二年前に無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた。愛嬌ある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の手伝い……。武内は溢れんばかりの善意で梶間家の人々の心を掴む。しかし梶間家の周辺で次々と不可解な事件が起こり……。最後まで読者の予想を裏切り続ける驚愕の犯罪小説!

 

32冊目は雫井脩介さん著「火の粉」です。

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①全体の感想(※ちょいネタバレ有り)

 普段は大人しくて物腰が柔らかいけれど、怒ると手が付けられなくなったり、急に狂暴になるキャラって今まで何度か見てきたんですけど、その中でもこの小説に出てくる男は一番と言っていいほど凶悪かもしれません。荒々しさというよりは逆に、静けさの中にある恐ろしい部分が読んでいて気分が悪くなるほどでした。身の回りにいたら絶対に近づきたくないですね。

 そんな男と闘う(?)家族の物語です。この家族にはどうか助かってほしいと願いながらページを繰っていました。

 

 

②気になった点(※ネタバレ有り)

 

・武内の異常性

 梶間裁判長は、的場家という一家の殺人罪として法廷に立っていた武内という男を、証拠不十分として無罪を言い渡しました。その後梶間は引退し、大学の教授として家族と共に暮らしていたのですが、その二年後、竹内が梶間家の隣に引っ越してきます。

 なんと偶然…と思いたいのですが、梶間は引退後、武内会っていて、そのときに曖昧ながら自分の住所を伝えていたのです。つまり、わざわざ隣に引っ越してきた武内は確信犯です。 それだけでもう気持ち悪いと思ってしまいます。自分を無罪にしてくれた恩人…と思っても普通その人の隣に引っ越しますか?いや無いでしょ、ドン引きですよ。

  しかし、これが武内という男であり、味方だと思った相手には近づき、嫌というほど世話を焼き、親切の押し売りをします。そしてその親切を相手が素直に受け取らなければ、ひどく凶悪な一面を見せるのです。梶間が無罪にした事件でも、武内は的場家のすぐ近所に住んでおり、多くの有難迷惑を送っていました。と書けば伝わるでしょうか。

 武内は無罪ではありませんでした。

 

 時が経つにつれ、梶間家の人間も武内の異常性に気づき始めるのですが、気づいたときにはもうほぼ手遅れとなってしまいました。共に住んでいた梶間の息子の妻は彼の異常性を言及したせいで家族仲が悪くなり家を追い出されてしまい、武内に殺された的場家の親族は武内を追い掛け回すうちに殺され、彼の顧問弁護士をしていた関という男も武内に殺されています。敵とみなした時の狂気性は、もはや人間的とは言えません。それは辛い幼少期を過ごした過去に基づくのですが、それでも同情の余地は全く無いと思います。

 

 

 

 

 

 読んだのが結構前であり、この武内の気味悪さばかりが頭に残ってこれ以上感想が書けません。短いですが以上です、ありがとうございました。

 

いやこのまま終わると後味が悪いのでもう少し書くと、武内が実は有罪であると気づき、無罪という判決を下して後悔した梶間は、己の家族を守るために奮闘し、的場家と同じ運命になることは避けられました。完全なめでたしで終わるわけではないのですが、読んでいた僕としてはすっきりしたので良かったです。

 

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 梅雨ですね、雨雲が目立つ空模様となってきました。と言っても僕は雨が嫌いではありません。気温は割と涼しいし、眩しいのは苦手だし、車の汚れは落ちるし、加えて雨の音は落ち着きます。

 そういえば僕が外出しようとすると何故か雨が弱まります。しかし別に晴れるわけではないので、晴れ男という感じでもありません。少し便利な能力ですが、これが雨を嫌いではない理由の一つでもあります。