30.『色のない島へ』
先天的に色彩感覚をもたずモノトーンの視覚世界で暮らす人々がいるピンゲラップ島とポーンペイ島。
原因不明の神経病が多発するグアム島とロタ島――脳神経科医のサックス博士はミクロネシアの閉ざされた島々に残る風土病の調査に訪れる。
島の歴史や生活習慣を探るうちに難病の原因に関わる思いがけない仮説が浮かび上がるのだが……。
美しく豊かな自然とそこで暮らす人々の生命力を力強く描く感動の探訪記。
30冊目はオリヴァー・サックスさん著「色のない島へ」です。
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
オリヴァー・サックスさん著で以前読んだ「妻を帽子と間違えた男」(ハヤカワ書房)で、トゥレット症候群や自閉症、アルツハイマーの患者たちとのやりとりのエッセイを読み、深く感銘を受けたことをきっかけに本書も買ってみたいと思いました。またそれだけでなく、多くの住民が全色盲の人たちであるという島への探訪記とあって、「いやそれはどんな環境で育った結果なんだろ…」と、とても興味が湧きました。
実際読んでみると、全色盲の方たちは普通に色が判別できる人たちと比べてハンデはあるのですが、逆に優れている部分もあり、僕の見える世界が彼らには見えないが、反対に僕に見えない世界が彼らには見えているのだと知りました。
また、本書の後編では「ソテツの島」をテーマに扱い、二つの島についてのお話が載っています。ソテツは植物であり、食用として食べられていた歴史があるのですが、そのソテツを食用として食べていた地域には多くの脳の病気を患った住民が現れたのです。それが本当にソテツの毒性のものなのかは不明です。しかし、何かしらの関連性はあるのではないでしょうか。
②気になった点(※ネタバレ有り)
・全色盲でも見える世界
”全色盲”の方の目には見えるものすべてがモノクロに見えている、というのは想像できると思います。しかし、正しくは光の強弱で見ているわけです。その光に対しても彼らの目は弱く、日中はまともに外を出歩くことはできません。実際、オリヴァー博士と他二人の同伴者が島に着いたとき、出迎えてくれた全色盲の子供たちは皆太陽の光に目をしばたたいたり、細めたりしていました。
世の中には全色盲の方のための特別な眼鏡があり、オリヴァー博士の同伴者の一人で島の人と同じく全色盲のクヌートさんも常時しています。
しかし、そんな目が弱い彼らにも僕たちより優れた能力があります。それは、”微かな色の濃淡の違いでさえ判別できる”ことです。色が判別できないと書いた手前、矛盾していると思われるかもしれませんが、もう一度繰り返すと、彼らは世界を”光の強弱”によって見ています。その強弱の違いは、色の微かな違いから生まれる光の強さを判別できるということです。
実際、島に住む女性が手編みで作ったジャケットは、普通の人が見たら全体が同じ色にしか見えないのですが、彼ら全色盲の人たちには、はっきりとカラフルでおしゃれなジャケットに見えるのです。
・そもそもなぜこの島(ピンゲラップ島)は全色盲の人の割合が高いのか
悪名高い太平洋の台風がピンゲラップ島のように海抜わずか一〇フィートにも満たない環礁島に及ぼす被害は甚大である。なぜなら強風にあおられた高波が島全体を水浸しにしてしまうからだ。一七七五年頃にピンゲラップ島を襲ったレンキエキ台風のときは、島民の九〇 パーセントが犠牲となり、それに続く飢餓により、生存者のほとんども苦しみながら死んでいった。(略)
それでも生き残ったピンゲラップの人々はその後人口を増やし、何十年かたつと島の人口は一〇〇人近くを数えるまでになった。しかしそれに伴って近親婚が増えたため、今度は別の問題が生まれた。それ以前は稀にしか見られなかった疾病の遺伝子が広がりをみせ、(略)
この疾病が視覚障害のことであり、このときから全色盲の島民が増えていきました。また、島にそのような疾病を治療できる環境も無く、常駐している医者はいるのですが、やはり島を出て大きな病院で治療をするという道しか残されていません。それでも島民は日々楽しく生活しているのですから、それを不幸だというのは違うのでしょう。
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以上です、ありがとうございました。
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最近グミをよく食べています。今まであまり食べていなかったのですが、なんかはまってしまいました。おすすめはピュレグミです。