安息の本棚

本を読了した後の自分の感想を残しておきたいと思い立ち、このブログを始めました。                           コメントに関する返答は仕様上できないようですが、ありがたく拝見させていただいております。Twitterもやってます。 @teruhiro_tose

6.『光の帝国 常野物語』

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「膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちからー「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への志向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか? 不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。」

 

6冊目は恩田陸さん著「光の帝国 常野物語」です。

 

①全体の感想

 常野一族は不思議な能力を持っているにも関わらず、他人にばれることを恐れて、出来る限り能力を隠して生活しているのですが、どれも世間に知れ渡ったら一躍有名になれるものばかりなので、「もったいないなぁ」なんて思いながら読んでいました。過去の出来事があるのでそれは仕方ないのですが。因みに、個人的には『遠目』という遠くの出来事を見ることができる能力が一番便利かなと思いました。

 また、短編集になっているので、読書休憩するタイミングが取りやすかったです(笑)

 

 

②特に気になった点

能力を持つことによる弊害

 能力には『遠目(遠くの出来事を見る)』、『遠耳(遠くの音を聞き取る、音程も完璧に分かる?)』、『未来視』、『完全記憶』、『長寿(200年以上)』、『発火』など、普通の人ではあり得ないものばかりです。そのため、昔(まだ戦争をしていた頃~)はその能力を戦争に使おうと軍の人々が、常野一族が住む集落を攻められることがありました。それで皆抵抗し、最終的にほとんどの者が死んでしました。

 また、現代でも能力を持つことによって、しなければならない宿命であったりなどを持ち、苦悩しながら生活する常野一族の話が多く出ていました。もちろんメリットとなる話もありましたが、能力を持つことによってプラスだけではなく、マイナスの効果も存在するのです。

 それらの負の要素を持ちながらも懸命に、賢明に生きる常野の人々の暮らしが普通の自分には面白かったです。能力物の話って、大抵それを活かして悪を倒すとか、日常を有利に進めるとかっていうのが多い気がするので、この短編集は少し目新しく感じました。

 また、「ツル先生」と呼ばれる『長寿』のおじいさんがいるのですが、本作品で一番印象に残っています。彼は、戦争時代から常野の一族が殺されたり、地方に散っていく中で、よく丘に佇み、常野の人々が再び安心して暮らせる場所に帰ってくるのを待っています。長く生きる中で多くの仲間を見送ってきただけに、その描写には哀愁を感じました。

 

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以上です、ありがとうございました。

 

毎回文字数が多すぎてさすがに疲れたので、これからは今回くらいの文字数で基本的に書いていこうと思います。