23.『ゾウの時間 ネズミの時間』
動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。
23冊目は本川達雄さん著「ゾウの時間 ネズミの時間」です。
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
動物をその体の大きさで比較することによって呼吸の頻度や感じる時間の長さ、飛ぶ走る泳ぐ速さやそのために使うエネルギー消費量、生きる術などが「え、そうだったんだ」と驚く声と共に知ることができます。動物の範囲も全て網羅し、貝類や藻、微生物などにも及んでいます。途中その比較をするに際し、幾らかの専門的な計算式などは出てきますが、その知識が無くとも普通に楽しめると思います。
特に海の生物(サンゴや藻)、昆虫の箇所は読んでいて、あれはそういうことだったのかという驚きが多く読みごたえがあったように思います。
いやこれだけの知らなかった知識が溢れんばかりに出てくるとメモの量も結構なものになり、ゆっくり読んでいました。
と言ってもいつものごとく特に気になった点だけを2つだけ書いていきます。
②気になった点(※ネタバレ有り)
・サイズによる時間の感じ方
時間は体重の1/4乗に比例するのである。
体重が増えると時間は長くなる。ただし1/4乗というのは平方根の平方根でだから、体重が16倍になると時間が二倍になるという計算で、体重が16倍なら時間も16倍という単純な比例とは違い、体重の増え方に比べれば時間の長くなり方はずっとゆるやかだ。
(略)
寿命を心臓の鼓動時間で割ってみよう。そうすると、哺乳類ではどの動物でも、一生の間に心臓は二十億回打つという計算になる。
寿命を呼吸する時間で割れば、一生の間に約五億回、息をスーハーと繰り返すと計算できる。これも哺乳類なら、体のサイズによらず、ほぼ同じ値となる。
生まれてから死ぬまでの体感時間は動物によらず同じくらいだというのは以前からどこかで見て知っていたのですが、時間は体重の1/4乗に比例するという正確な値は初めて知りました。それも哺乳類の場合だけなんですね。
本書の名前から考えると、
・体の小さなネズミは寿命が短いが、心拍数はとても早く、一生の間に20億回打つ
・体の大きなゾウは寿命は長いが、心拍数はとても遅く、一生の間に20億回打つ
ということです。
ところで、人間という一つの種族の場合でも、体が大きい人と小さい人でも体感時間は変わっているものなんでしょうかね…。
一つの種族の中で体の大小についてはどうなのか書かれていなかったと思うのですが、考えてみると体感時間なのでこの疑問を解決してくれる解答は得られないのかもしれませんね。同じ魂を持ったまま体の大きい人生と小さい人生を歩んだ人ではないと分からないかもしれません。多分。
・ヒトデの体
ヒトデの体の表面には、数ミリ程度の小さな骨(骨片)がびっしりと敷き詰められている。骨片は炭酸カルシウムの単一結晶でできており、ステレオムと呼ばれる微小な穴がたくさんあいている。この穴のなかに骨をつくる細胞が入っている。
ヒトデのあの妙に硬い体表は骨だったんですね。自分はなんか硬い皮膚に似たものだと思っていたので驚きました。
体表を微小な骨片で敷き詰めることであの硬さを実現し、ほんの少しの隙間があることで、動くときもうねうねと体をくねらせて移動することができるのです。実際画像を見ると分かりやすいと思いますが…まぁちょっと生理的に受け付けない人もいるかもしれません。僕は白黒で見ていますが、さすがにカラーだときついです。
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他だと、昆虫の体の仕組みやウニのあの棘についての説明が面白いと感じました。が、疲れたのでこの辺にしておきます。以上です、ありがとうございました。
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久しぶりに図書館に行き5冊くらい借りてきたのですが、借りてから「返却期限内に全部読んで今までと同じように感想を書くのはしんどい」という結論に至ったので、その5冊については感想を書くにしても短くなると思います。ご容赦を。