31.『僕のメジャースプーン』
ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。
冊目は辻村深月さん著「ぼくのメジャースプーン」です。https://www.amazon.co.jp/gp/product/4062763303/ref=oh_aui_detailpage_o00_s01?ie=UTF8&psc=1
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
辻村深月さんの小説を読むのは何気に今回が初めてだったりします。僕は普段から特定の著者に偏って本を買っているので、これからは著者の名前を見ずに本を買ってみようかと思っています。
主人公は小学四年生の、変わった能力を持った少年です。この少年の能力の扱い方を巡って本書は進んでいくのですが、読み進めるほど考えさせられました。特に「大切な人を傷つけた人と、将来どうのような姿勢で関わっていくのか」という点で、主人公となるべく同じ視点に立って悩んでみました。
難しいです。憎いけれど、その人に仕返しをするような行為は結局同じ悪人であると思いますし、それでも何もせず忘れるよう努めるのも大変な忍耐力を必要とするはずです。
この少年はどのように向き合うのか、見物でした。
②気になった点(※ネタバレ有り)
・少年の能力
”Aという条件をクリアできなければ、Bという結果が起こる”という、「条件ゲーム提示能力」です。具体的に言うと、相手に対して「お前は今から1時間以内に10キロ走れ(A)、さもなければお前はこの先一生移動する時歩くことができなくなる(B)」と話しかけると、その相手はBという結果が起こることを恐れて全力でAに取り組まなければならなくなる、というわけです。
人によると思いますが、1時間以内に10キロ走るとなるとなかなか辛い思いをしなければならないと思います。しかし、この先一生歩くことができなくなる、という罰があるとしたならほとんどの人は必死に取り組むと思うのです。それを言霊のように相手に強制させることができる能力です。
めっちゃいいじゃん、と思いますが、相手は強制されているわけですから、第三者的な相手に対してもそう頻繁に使おうとは思えません。よほど嫌な相手、それこそ大切な人を傷つけたような悪人にしか使わないかもしれません。
・少年の答え
そして実際、少年は悪人に対して能力を使いました。まず、その悪人は、他人や動物、自分、この世の全てがどうでもいいと公言しているような医学生です。そのような相手に一体何を提示すればいいのか。
少年の出した答えは
「今すぐここで、ぼくの首を絞めろ」(略)「そうしなければ、お前はもう二度と医学部に戻れない」
という、命懸けのものでした。犯人が何にも未練がないというなら首を絞めず、じっとしているはず。しかし、犯人は大きくうなずいた後、ためらわずに少年の首を絞めました。
首を絞めたなら、やはり犯人は医学部に未練があり、しかもこれからは殺人犯として生きなければならない。首を絞めないなら、犯人は二度と医学部には戻れない。どちらを選んでも犯人は損しかしませんが、少年にも危害が及ぶ大変危険な賭けでした。
結果的に少年は助かったのですが、この選択をした10歳の少年の勇気(というか無謀さ)には驚かされます。
それだけ、大切な人のことを壊した犯人が憎かったのでしょうが、そのような答えを出した少年を心配をする人たちのことも考えてあげるべきだったのでしょう。
復讐をしても、それで誰かが救われるわけではない、むしろ悲しむ人の方が多いはずですから。
少年と同じような立場に自分が立っていたら、どのような答えを出すでしょうか。少年と同じように復讐を企てるか、完全に犯人のことを忘れようとするか、また別の方法を取るか…。考えさせられました。
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以上です、ありがとうございました。
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今年はクールビズが1ヶ月早まりましたね、とても嬉しいです。
暑がりな僕としては半年くらいクールビズにしてほしいですが。