8.『死神の精度』
「①CDショップに入りびたり②苗字が町や市の名前であり③受け答えが微妙にずれていて④素手で他人に触ろうとしない一一一そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。」
8冊目は伊坂幸太郎さん著「死神の精度」です。
①全体の感想
まずタイトルに惹かれ購入しました。主人公が死神というのも珍しかったですし、その主人公には『死神』の怖いイメージが全く無く、ただの無類な音楽好きな人間のようで、けれども確かに人間ではない役割を負っています。それは死の宣告をされた人間を一週間観察し、やはり死ぬべきであるなら「可」を、まだ生かしておくべきであるならば「見送り」と判断することです。死神にも、情報部やら主人公のような観察隊やらと、いくつかの組織に分かれているようで、会社のような形態であり面白みがありました。
②気になった点
・死神のイメージ
死神の見た目はどう見ても人間であり、日常生活に差し支えない程度には人間の生活に慣れています。しかし、人間が当然のように考えていることにいちいち疑問を持ってそれを質問する死神の変人っぷりが面白かったです。「旅行とはなにか」「恋愛とはなにか」など、こんなのを日常会話に挟んでくるのがシュールでした。見た目は観察する度に毎回変えており、だいたいが20代のそこそこイケメンの男性なので、それも相まって変な感じですね(笑)。
それに死神は皆一様に音楽好きであり、普段全く感情を表に出さないのですが、音楽を聴いている時だけ少しニヤついているのです。
自分の持っている死神の怖いイメージは全くなく、少し親しみを持って読むことができました。
・「可」か「見送り」か
観察の死神の役割は前述の通り、死の宣告をされた人間を一週間観察することですが、特に死神が上の者に仕事ぶりを監視されているわけではなく、本当に個人の自由で「可」か「見送り」かを判断すればいいのです。そのため、真面目な死神はちゃんと一週間観察対象者を見守り、最後に幸せな人生にしてあげようとする者もいますが、中には特に見守ることなく全て「可」にする者もいます。自分たち人間からしたらそんなの勘弁してほしいですけど(笑)。
主人公の死神「千葉」は、一応最後まで見守りますが、特にこちらからアクションを起こすわけでもなく、ただ見て「やはり可だな」と判断します。真面目だけど、感情が薄いというか、なんというか。ただ、将来音楽の道で花咲くかもしれないと思った人間には例外に「見送り」としています。本当に人の死が死神の自由気ままに委ねられているんですよね…。どうか自分は思慮深いやつに当たりますように。
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以上です、ありがとうございました。
11月で急に寒くなりましたね。