24.『聖の青春』
重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた”怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作
24冊目は大崎喜生さん著「聖の青春です。」
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
最近将棋に関する大きな話題が2つありましたよね。
1つは羽生さんの永世七冠
もう1つは藤井さんの29連勝(+朝日杯優勝)
どちらも凄まじい記録ですよね。このおかげで将棋に興味を覚えて、始めた人も多いと思います。
今回は、永世七冠を獲得した羽生さんが若い頃、羽生さんと同等の強さを誇り、29歳の若さでこの世を去った将棋棋士、村山聖さんの、生まれてから死ぬまでの熱く激しく、言葉通り命を懸けて人生を駆け抜けた軌跡が書かれた本について書いていきます。
村山さんの将棋に懸ける想いやその生き方に途中何度も涙を流してしまい、本当にここまで熱く焼き焦げるほどの情熱を持って生きた人がいたのだと思うと、ただただ尊敬するばかりです。思い出しただけで涙腺が緩みます。
そして彼を支えてくれた家族や師匠、将棋の同志達がいたからこそ、村山さんも自分の人生を真っすぐに生き抜けたのだと思います。
本書は僕の本棚に永劫残しておこうと思います。それほどの、それ以上の価値があります。
②気になった点(※ネタバレ有り)
・重病を抱えながらの棋士生活
村山さんが発症した病気は「ネフローゼ症候群」という腎臓の病気で、尿の中に大量のたんぱく質が出るのに伴って、血液中のたんぱく質が減少するために、むくみ、血液中のコレステロールなどの脂質の上昇等が現れるというものです。
実際本書の中でも、度重なる高熱に苦しんでいる描写が多々書かれており、少なくとも僕なんかが想像できないほど苦しい病気です。それでも村山さんはこのネフローゼを抱えながらも、将棋界では「怪童」と恐れられるほどの強さを伴って、人としても棋士としても成長しました。
病気で苦しくて歩けないほど辛い時でも、将棋会館まで車に乗せてもらい、部屋まで這いずってでも将棋を指し続けました。「名人になりたい」という一心を背負って、戦い続けたのです。
這うようにして対局場へいき、たいきょくを 終えて真夜中にタクシーを拾って部屋にたどり着くと、スーツを着こんだまま眠ってしまうこともしょっちゅうだった。明け方に汗だくになって目を覚ます。そして、自分が高熱を出していることと背広を着たまま寝ていることに気がつく。しかし体が動かない。まるで案山子になったように蒲団の上で微動だにできない。
ちょっとしたことで発熱に襲われるのは子供のころと変わらなかった。ただ、歳とともに熱に対する抵抗力がなくなっているように思えた。
このまま朝はこないかもしれないと思うこともあった。しかし、たとえ朝日が昇らなかったとしても、そして熱にうなされるどんな漆黒の夜にも、村山は心の中に太陽を抱いていた。
名人という光。
子供のころから何十万回と夢に見た名人位。それが村山を支え、それはいつも本物の太陽のように心を温めてくれた。
それほどまでの情熱が彼を突き動かしていたんですね。しかし残念なことに、A級までは辿り着いたのですが、そこからは病気が進行し、対局の欠席も増えてしまい、名人に挑戦することなく、亡くなってしまいました。
僕が勝手に思うに、村山さんがもう少しだけ猶予を与えられたのなら、必ず名人になっていたと思います。そう思わせてください。
・師匠
村山さんの師匠は、大勢の弟子を抱える西の森一門として有名な、森信雄七段です(昨年引退されました)。他のお弟子さんだと、糸谷哲郎八段や山崎隆之八段が有名です。
そんな森師匠と村山さんの関係はただの師弟を超えて、親子のようなものでした。森師匠は村山さんが奨励会員になる一年ほどを、自分のアパート内弟子として住み込ませ、周りの世話をしてあげていました。村山さんが一人暮らしを始めてからも常に気を配り、彼が動けない時には下着さえも洗濯してあげたそうです。
特に印象に残っているのは森師匠が雀荘で麻雀を打っているときにふらっと現れた村山さんとの会話です。
そして、森の後ろにそっと座った。
「どうしたんや、村山君」
森が話しかけると村山は何も言わずにニコニコしている。
「麻雀やりたいんなら替わってやろか?」
「はあ、いえ結構です」
「なら何や?飯でも食いにいこか?」
「いえ。もう食べてきました」
そう言うと、村山は楽しそうに麻雀を眺めている。
「なにかいいことあったんか?」と森が聞くと、
「はあ」と村山は照れくさそうに首をすくめた。
「いいことあったんなら言うてみい」
「あの、森先生」
「何や」
「僕……僕」と言って村山は少女のように顔を赤くした。
「僕、20歳になったんです」
その後村山さんが雀荘を出ていった後、森師匠はその言葉の重さに気づきます。「そうか、村山君よかったなあ」と何度も心の中で呟くのです。
そこに至るまでの話を読んだ僕としては、もう感極まってしまいました。この嬉しさをどうしても師匠に直に伝えたかったのでしょう。
そして彼は20歳どころか29歳まで、誰よりも熱い人生を送りました。その記念として彼には名誉九段の称号が贈られています。
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これ以外にも感動する場面はあるのですが、書ききれないのでこれで終わりです。ありがとうございました。
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いつもより長くなってしまいました、疲れました。
雑談4
忙しい時期は終わったとぬかしながらブログに読書感想を書いていないですね、すみません。
以前図書館で本を7冊借りて読み進めてはいるのですが、返却期間にぎりぎり間に合うかどうかって状況で長々と感想を書いている時間が無いというのが言い訳です。
ツイッターでは簡潔に感想を書いています。が、やはり読書のアウトプットという面では少し、というかかなり効果が薄い気がします。
今度から図書館で本を借りるときはもう少し冊数を減らそうと思います。
話は少し変わりまして 僕は普段、図書館で本を借りることってほとんどないんですよ。なぜかって、やっぱり本は新品で買って読みたいんです。「これは自分のお金で買った、自分だけの本だ!」って意識で読むと、読書のモチベが俄然違うからです。で、もう一度読みたいと思ったら本棚に残し、もう充分かなと思ったら売ることにしています。
でも図書館に寄ってみるとなんか借りたくなってしまうんですよね。その場の雰囲気がそうさせるのかは謎ですけど。こう、本棚を眺めているうちに、自然と目についた本を手に取って、眺めて、「これを今すぐにじっくりと読みたい」と思った本を脇に抱え、それを繰り返し、あらかた見て回ると気が付いたらカウンターにいる。半分意識が飛んでいるのかしれません。
ということで、読書感想はもう少し後になります。それでは。
23.『ゾウの時間 ネズミの時間』
動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。
23冊目は本川達雄さん著「ゾウの時間 ネズミの時間」です。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4121010876/ref=oh_aui_detailpage_o05_s00?ie=UTF8&psc=1
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
動物をその体の大きさで比較することによって呼吸の頻度や感じる時間の長さ、飛ぶ走る泳ぐ速さやそのために使うエネルギー消費量、生きる術などが「え、そうだったんだ」と驚く声と共に知ることができます。動物の範囲も全て網羅し、貝類や藻、微生物などにも及んでいます。途中その比較をするに際し、幾らかの専門的な計算式などは出てきますが、その知識が無くとも普通に楽しめると思います。
特に海の生物(サンゴや藻)、昆虫の箇所は読んでいて、あれはそういうことだったのかという驚きが多く読みごたえがあったように思います。
いやこれだけの知らなかった知識が溢れんばかりに出てくるとメモの量も結構なものになり、ゆっくり読んでいました。
と言ってもいつものごとく特に気になった点だけを2つだけ書いていきます。
②気になった点(※ネタバレ有り)
・サイズによる時間の感じ方
時間は体重の1/4乗に比例するのである。
体重が増えると時間は長くなる。ただし1/4乗というのは平方根の平方根でだから、体重が16倍になると時間が二倍になるという計算で、体重が16倍なら時間も16倍という単純な比例とは違い、体重の増え方に比べれば時間の長くなり方はずっとゆるやかだ。
(略)
寿命を心臓の鼓動時間で割ってみよう。そうすると、哺乳類ではどの動物でも、一生の間に心臓は二十億回打つという計算になる。
寿命を呼吸する時間で割れば、一生の間に約五億回、息をスーハーと繰り返すと計算できる。これも哺乳類なら、体のサイズによらず、ほぼ同じ値となる。
生まれてから死ぬまでの体感時間は動物によらず同じくらいだというのは以前からどこかで見て知っていたのですが、時間は体重の1/4乗に比例するという正確な値は初めて知りました。それも哺乳類の場合だけなんですね。
本書の名前から考えると、
・体の小さなネズミは寿命が短いが、心拍数はとても早く、一生の間に20億回打つ
・体の大きなゾウは寿命は長いが、心拍数はとても遅く、一生の間に20億回打つ
ということです。
ところで、人間という一つの種族の場合でも、体が大きい人と小さい人でも体感時間は変わっているものなんでしょうかね…。
一つの種族の中で体の大小についてはどうなのか書かれていなかったと思うのですが、考えてみると体感時間なのでこの疑問を解決してくれる解答は得られないのかもしれませんね。同じ魂を持ったまま体の大きい人生と小さい人生を歩んだ人ではないと分からないかもしれません。多分。
・ヒトデの体
ヒトデの体の表面には、数ミリ程度の小さな骨(骨片)がびっしりと敷き詰められている。骨片は炭酸カルシウムの単一結晶でできており、ステレオムと呼ばれる微小な穴がたくさんあいている。この穴のなかに骨をつくる細胞が入っている。
ヒトデのあの妙に硬い体表は骨だったんですね。自分はなんか硬い皮膚に似たものだと思っていたので驚きました。
体表を微小な骨片で敷き詰めることであの硬さを実現し、ほんの少しの隙間があることで、動くときもうねうねと体をくねらせて移動することができるのです。実際画像を見ると分かりやすいと思いますが…まぁちょっと生理的に受け付けない人もいるかもしれません。僕は白黒で見ていますが、さすがにカラーだときついです。
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他だと、昆虫の体の仕組みやウニのあの棘についての説明が面白いと感じました。が、疲れたのでこの辺にしておきます。以上です、ありがとうございました。
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久しぶりに図書館に行き5冊くらい借りてきたのですが、借りてから「返却期限内に全部読んで今までと同じように感想を書くのはしんどい」という結論に至ったので、その5冊については感想を書くにしても短くなると思います。ご容赦を。
22.『僕と妻の1778話』
「妻が、悪性腫瘍のために余命一年と告げられた。作家の夫は、妻に余計な心配をかけないようにする以外、出来ることはない。せめて、毎日気持ちの明るくなるような話を書いて、読んでもらおうと考えた───。第一回『詰碁』から一日一話えお妻に捧げ、『最終回』まで、全1778話になった。夫婦の歳月のなかのメモリアルセレクション52編。五年頑張った妻が亡くなった日までの、感動の創作秘話も収録。」
22冊目は眉村卓さん著「僕と妻の1778話」です。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4087465411/ref=oh_aui_detailpage_o03_s01?ie=UTF8&psc=1
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※今回は全体の感想のみで、短めです。(※ネタバレ有り)
著者の妻が悪性腫瘍のために余命1年を言い渡されてから、最後の日までの1778日、毎日1話(原稿用紙3枚以上)を書き続けた、そのうちの52編が載っており、各話の後にその書いた話の創作秘話が付いています。
妻のために1778日ですよ、それだけで泣けるんですけど。
内容は全て作り話で完全なノンフィクションは無いのですが、たまに現実の事から派生させた話も載っていて、例えば、家族の話であったり、妻の病気に対してであったりです。
その52編のうち最後の2編を見るのには結構時間がかかりました。物語が長いからではなく、どうあがいても妻の死が訪れてしまうのが分かっているからです。内容について語るのはやめておきますが、妻への愛情がひしと読み手に伝わってくるものでした。
愛する誰かのために創るものというのは、それ以外の目的で創られたどのようなものよりも崇高で尊いもののように感じます。
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以上です、ありがとうございました。
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忙しい時期はおそらく終わったので、これからはまた読書のペースを上げていきたいと思います。
というか文章を書く技術も上げたいですけどね。
後から読み返して、その時の自分の想いがそのまま伝わるような文章を書きたいです。
21.『アドラー心理学入門』
21冊目は岸見一郎さん著「アドラー心理学入門」です。
構成は
第一章 アドラーはどんな人だったか
第二章 アドラー心理学の育児と教育
第三章 横の関係と健康なパーソナリティ
第四章 アドラー心理学の基礎理論
第五章 人生の意味を求めて
となっています。
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
アドラー心理学には以前から興味があったので、入門と名のついた本書を購読しました。著者の岸見一郎さんのお名前も有名でしたので、それも決め手でした。
入門というだけあって知識を余りもたない僕でもほとんどすらすら読めましたし、これから生きていく上で参考になることも多く書かれており、大変充実した読書時間でした。
僕は普段から気になった箇所には小説だろうと実用書だろうと付箋を貼ることにしているのですが、この本に貼った付箋の場所は、以後何度も読み返そうと思います。特に第二章と五章ですかね。育児と教育、人生を生きていく上で大切だと思う考え方が載っており、参考になります。
②気になった点(※ネタバレ有り)
それでは、上述した第二章と五章について書いていきます。
・育児と教育について(第二章)
まず育児の行動面の目標として、
一、自立する
二、社会と調和して暮らせる
ということ。
そしてこれを支える心理面の目標として、
一、私は能力がある
二、人々は私の仲間である
という目標を提示します。
これらの目標を達成させるために子供をどう援助していけるかが重要になります。
一例として、子供がいたずらをした場合を考えます。その場合、本書に載っているものとして
・罰しない
・適切な行動に注目する
・ほめるのではない
の三点が重要であると僕は感じました。
一つ目の罰しないというのは、罰することにより、いたずらをしていれば親や教師に注目される、見捨てられないで済むと考えるようになり、いたずらを継続してしまうからです。
罰の効果は一時的であり、罰せられると自分には能力がないと思うようになり、自分には居場所がないという気持ちを強くしてしまいます。
二つ目の適切な行動に注目するというのは、罰しないの逆であり、適切な行動をすることによって注目を集められるのであれば、不適切な行動は次第に減っていきます。
三つ目のほめるのではないというのは、能力のある人が能力のない人に、上から下に相手を判断して評価することだからです。褒められたときは嬉しいが、褒められなかったときは自分には能力がないと強く思ってしまいます。
でも実際褒めないけど適切なことには評価をするというのは難しそうですね。
少し自分で考えてみたのですが、「よくできたね」ではなく「ありがとう」や「助かった」などの表現を使えば課題はクリアできそうな気がします。どうなんでしょ。
・人生の意味を求めて(第五章)
自分なりに簡単に解釈して書くと、自分のことをよく思わない人がいるということは、それだけ自由に生きているということであり、他人を気にしてはいけない、失敗を恐れてはいけない、その代わり、その自由に生きた結果起こる責任は全て引き受けなければいけない、という感じでしょうか。
他人の目を気にして生きるということはそれだけ自分のしたいことを制限することになるでしょうし、失敗を恐れて新しいことにも挑戦しようという気持ちが無くなってしまいます。
僕も結構人の目を気にする方なので、これからは本書の内容を思い出して自分の好きなことを自身を持って取り組んでいけたらなと思います。
もう一つ気に入ったのが、
嫌だと思っている人と付き合うときに、この人のこと嫌な人だ、と思って付き合い始めると、その人との付き合いはそういう付き合いにしかなりません。(略)ですから、一度、これまでのことはすべて水に流して、今日私はこの人と初めて会うのだ、と思ってみるのです。(略)そうすると過去はもうないわけです。(略)一週間前どころか昨日すら存在しないと考えてみると、たしかにこの人は、嫌なことをいったかもしれないが、しかし今日同じことをこの人がいう、あるいは、するとは限らないわけです。そう思って付き合い始めます。そうすると、思いもかけない発見があります。そのように思えて初めて、その人との時間は死んだものではなく、生きたものになります。
これは本書を読んでいた中で一番ハッとさせられたものでした。嫌だと思っていた人でも会ってみれば意外と気が合う人だっていますし、嫌なことをされた、言われたことがあっても本人に悪意があったか分かりません。そう考えると、初めて会う人だと思って付き合い始めてみるというのは効果的ではないかと思いました。
それに、嫌な人だと思って接しても自分が辛いだけですし。
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以上です、ありがとうございました。
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久しぶりの更新でした。
読書感想を書くときは時間的にも気分的にも余裕があるときに書こうと決めているので、最近はそれが無かったということです。
まだ完全に余裕があるわけではないので更新は遅いかもしれませんが、このブログはちゃんと続きます。それでは。
20.『ラッシュライフ』
「泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場───。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。」
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
5人の視点から始まる物語がラストに向けて繋がっていく構成が、読んでいて非常に気分が良かったです。終盤になってくると、次はどう繋がっていくのか気になって気になって一気に読んでしました。
僕は普段本が読み終わるのがもったいなく感じて、「ラストは明日読もう」と取って置くんですが、いや抗えませんでした。
②気になった点(※ネタバレ有り)
・職を失った男
この男性は豊田というのですが、彼は、豊田は会社からリストラされ、家族に見捨てられ、就活をするも40社連続不採用という、絶望の状況です。しかも、娘の養育費を払わなければなりません。辛すぎる。
そして路頭に迷っているところに、鋏を持ちながら「バラバラにしてやるんだ」と呟く女が野良犬の脇に立っているのを見ました。その野良犬に親近感を覚えた豊田は犬をその女から遠ざけようと、女に向かって「私の犬だ」と、いかにも嘘っぽいことを言うのですが、本当に飼い犬かと思うくらい野良犬は豊田に懐くんですね。そして犬と共にその場から立ち去った豊田は、女のヒステリックな叫び声を聞きます。
豊田が野良犬に親近感を覚えたように、野良犬も豊田に親近感に似た何かをもっていたのかもしれませんね。因みに、ラストでこの野良犬は首輪に高額当選している宝くじを持って豊田のところに帰ってくるのですが、登場人物の中で一番辛い立場にあった豊田が、最終的に一番救われてくれたのは嬉しかったです。途中豊田は色々あって拳銃を手にし、郵便強盗未遂(?)らしきことをしてしまうのですが、僕個人としては、警察にも見つからず、宝くじを手にした後の人生は幸せであってほしいですね!
・女性カウンセラー
この女性は京子というのですが、彼女はサッカー選手である青山と不倫をしており、お互いの夫、妻を殺して夫婦になろうと青山と共に画策していました。京子の夫は事を起こす前に突然別れようと京子に電話で話しており、不審がりながらも手間が省けたと喜びます(実際は捨てられたように感じて少し怒っていますが(笑))。
そして、次は青山の妻をやる番です。青山はずっと渋っていたのですが、結局青山の自宅に車で向かうことになりました。しかし、途中で二人を乗せた車は、あり得ないことに人をはねてしまうのです。焦った二人はとりあえず車のトランクに押し込んで走り出すのですが、走行中、はねた遺体が勝手に飛び出したのです。それも一度だけではなく、何度も。京子はヒステリック気味になりながらも遺体をトランクに積みなおし、遂に青山宅に着きます。
着いた後も少し厄介事が起こり、京子はその場を一旦離れます。そして暫くして戻っていると、青山とその妻が話してるのを陰から聞きました。その二人が、実は京子を逆に殺そうとしていたことを。そしてその青山の妻はトランクに隠れていて、遺体を度々落としていたのもその人だったわけです(落としていた理由はその遺体が気持ち悪いからですが、まぁそうですよね)。
京子はまさか自分が青山に裏切られていたとは知らず、茫然自失で元来た道を丸半日かけて引き返すのでした。
読み始めた時からこの京子という女性は性格が悪いなぁとは思っていたのですが、愛する青山に裏切られてプライドも傷つけられたのには、少しばかり可哀そうという感情の反面、これでいくらかは懲りただろうと思いました。
因みに、先ほど上述した、野良犬に向かって「バラバラにしてやるんだ」と呟いていた女性は、この京子です(笑)。精神的に追い詰められていたんでしょう。
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以上です、ありがとうございました。
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私事ですが、最近読書する時間もこの読書記録をつける時間もあまり取れず、更新が遅くなっています。
時間があるときに内容を思い出しながら少しずつ書き溜めているのですが、次の更新もまた遅くなるかもしれません。2月?
まぁあくまで自己満足なんでね!読んでくれている方に感謝しつつ、勝手に書きます。それでは。
19.『自助論』
「「どんな仕事でも、有能な人間になるには次の3つが欠かせない。それは天性と勉強、行動力だ」という格言があるが、ビジネスでは、頭を使い、情熱をもって実践していくことが成功の秘訣だ。どんなにありきたりでつまらないと思われることでも、決められた仕事をきちんとこなしていけば、残りの人生はその分だけいっそうすばらしいものになる。───サミュエル・スマイルズ」
19冊目はS.スマイルズさん著、竹内均さん訳「自助論」です。
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①全体の感想(※ネタバレ無し)
そういえば、今まで自己啓発本ってあまり読んだことないなぁと思い、有名な本書を購入しました。
大まかな内容としては「自助の精神、忍耐、転機、仕事、意志と活力、時間の知恵、金の知恵、自己修養、出会い、器量について、10章に分けて自助との関連性から、多くの著名人の例を出しながら解説されています。この例が本当に多くて驚きました。著者の努力が垣間見えます。
因みに自助とは、「勤勉に働いて、自分で自分の運命を切り拓くこと」です。なんでも他人に頼るのではなく、自分の努力によって築きあげたもので生きろという感じでしょうか。自分でもそうしたいとは思いますが、結構難しい場面もあり、まだまだなのだなと思うことがあります。鍛錬せねばならない。
本書で特に読んでためになったなと思うのは、8章(自己修養)と10章(人間の器量)でした。特に10章。他の章は「まぁそうだろうな」と思うところが多く、自分の中での確認作業を行いながら読み進めました。
②気になった点(※ネタバレ有り)
付箋をつけた箇所を引用してその感想を書こうと思ったのですが、全て引用して書くとかなり長くなりそうなので、特に気になった箇所だけ書きたいと思います。
・4章《時間の知恵》より
オランダの政治家デ・ヴィットの処世訓もセシルと似ている。
「一回に一つの仕事だけを行なえ。もし急いでことを運ばねばならないハメになったら、その始末がつくまで他の仕事は一切考えない。家の中のゴタゴタに気づいたら、とにかく一気にケリをつけてしまうのだ」
やらなければならない仕事は何よりも率先して行い、その間は他のことを並行して行わず、一つ一つ確実にこなしていく。そしてやりだしたら途中で放置せず、一気に終わらせる。
僕の場合、意識していても途中で娯楽に逃げてしまうことがあるので、これは特に気を付けなければならない処世訓だと感じました。今までこれができないせいで苦労することが多々ありました。これからの教訓にしていきたいです。実際今まで僕の周りで勉強や仕事ができていた人は、やるべきことを後回しにしない人ばかりでした。
自分はあれです、やるべきことは必ずやり遂げますが、だいたい期限ぎりぎりだったりして、苦労するタイプです。改めなければ…。
・10章《人間の器量》より
「ご子息に私の名を分け与えたと伺いましたが、それならぜひ私の家に伝わるとっておきの処世訓も教えてあげてください。それは”人からよく見られたいと思ったら、うわべだけでなく中身もよい人間になるよう努力せよ”という言葉です。(略)」
(略)真の人格者は、人に見られていようがいまいが正しくふるまうものだ。たとえば、目の前にナシが置かれていて、あたりに人気がなければ、一、二個はくすねてしまう子供がいるかもしれない。だがある少年は、誰もいないところでさえナシを盗んだりはしなかった。その理由を聞かれて、彼はこう答えた。
「いいえ、そこには人がいました。ぼくが自分の目で見ていたんです。ぼくは自分が悪いことをするところなんて見たくはありませんからね」
周りの目があるから正しい行いをする、善人のようにふるまうのではなく、周りに誰も自分を評価してくれる人がいなくても、普段から良心の心を持って生きることが大事ですね。場合によって「自分を見ている人がいる、だから人に優しく当たったり、褒められることをしよう」「誰も見ていない、ならば別に自分勝手に振舞ってもいいか」などと考えるのではなく、常に同じ心構えでいたいです。
「ぼくは自分が悪いことをするところなんて見たくはありませんからね」
これは本当に大切なことだと思います。
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以上です、ありがとうございました。
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2018年最初の更新でした。(遅い)
本年もよろしくお願いいたします。
年越しそばは食べそこねました、来年は食べたいです。